はじめに
変形性股関節症は、関節の摩耗や変形によって引き起こされる痛みや可動域制限を伴う疾患ですが、近年では「慢性炎症」と「循環不全」がその根本に関わっていることが明らかになってきました。
理学療法士として多くの変形性股関節症の患者さんと接する中で、単なる「軟骨のすり減り」や「関節の変形」だけでは説明のつかない症状の複雑さを実感しています。
オステオパシーの観点から見ると、**「身体は一つのユニット」**という基本原理に基づき、股関節の症状も全身の循環系と密接に関連した現象として捉えることができます。
「なぜ関節が痛むのか?」「なぜ回復しにくいのか?」この疑問に対する答えは、股関節と骨の内側(骨髄)に起こる炎症と血流の問題、そして全身の循環動態にあります。
今回は、変形性股関節症における慢性炎症と循環の関係について、解剖学的・生理学的根拠に基づいて整理し、オステオパシーが提供できる自然治癒力を引き出すアプローチについてお話しします。
1. 慢性炎症と循環不全:骨髄レベルでの病態理解
従来の理解を超えた病態認識
関節の炎症というと、「滑膜炎」や「関節軟骨の摩耗」が注目されがちですが、理学療法士としての解剖学的知識から、実際はより深層で複雑な現象が起こっていることが分かります。
骨髄レベルでの炎症(Bone Marrow Lesions: BMLs) 近年のMRI研究により、変形性股関節症の疼痛発現には、骨の内側=骨髄レベルでの炎症が慢性痛の発信源として重要な役割を果たしていることが示されています。
特に大腿骨頭や寛骨臼の**海綿骨内に浮腫(骨髄炎症)**が起こり、その部位が痛みのセンサーとして働くとされています。
オステオパシー的理解:Primary Respiratory Mechanism との関連
オステオパシーでは、craniosacral rhythmが全身の体液循環に影響を与えると考えています。
中枢神経系と骨髄循環の関連
- 脳脊髄液の循環異常
- 自律神経を介した血管調節機能の失調
- 内分泌系による炎症調節機構の破綻
骨髄循環と全身循環の統合 骨髄は造血機能を持つ重要な臓器であり、その循環不全は単に局所の問題ではなく、全身の循環動態と密接に関連しています。
慢性炎症の悪循環メカニズム
循環不全による炎症の持続 この**骨髄レベルの炎症が持続する背景には「循環の滞り」**があります:
- 微小循環の障害
- 毛細血管レベルでの血流低下
- 内皮機能不全による血管透過性の亢進
- 血液粘性の増加
- 代謝環境の悪化
- 酸素分圧の低下(hypoxia)
- pH値の低下(acidosis)
- 栄養素供給の不足
- 炎症性サイトカインの蓄積
- IL-1β、TNF-α、IL-6の過剰産生
- 抗炎症性サイトカインの相対的不足
- 炎症の自己増幅サイクル
- 組織修復の阻害
- 幹細胞機能の低下
- コラーゲン合成の障害
- 線維化の進行
2. 股関節の血管解剖学とオステオパシー的アプローチ
股関節を栄養する主要血管系

理学療法士としての解剖学的知識から、股関節の血管供給は非常に特殊で脆弱な構造を持っていることが分かります。
内側大腿回旋動脈(Medial Circumflex Femoral Artery)

- 大腿骨頭の後上部を栄養する最重要血管
- 深大腿動脈から分岐
- 股関節包内での走行が特徴的
- 外傷や炎症により容易に圧迫・閉塞される
外側大腿回旋動脈(Lateral Circumflex Femoral Artery)

- 頚部前方や関節包前面への血流供給
- 大腿直筋、中間広筋への栄養動脈
- 股関節屈曲筋群の血流に影響
閉鎖動脈系(Obturator Artery System)

- 靭帯内動脈(Artery of Ligamentum Teres)
- 小児期では重要だが、成人では退縮
- 血管新生の予備経路として機能
上・下殿動脈(Superior & Inferior Gluteal Arteries)

- 股関節周囲筋群への血流供給
- 関節包後方部への栄養
- 骨盤内循環との連絡
当院でできること
1. 構造調整
骨盤環の統合的調整 変形性股関節症における構造的不整合の改善:
仙腸関節のモビライゼーション
- 仙骨の nutation と counternutation の回復
- 腸骨の生理的可動性改善
- 骨盤リングの力学的統合
股関節の関節内調整
- 寛骨臼-大腿骨頭の適合性改善
- 関節包内圧の正常化
- 関節唇の機能回復
腰椎-骨盤移行部の調整
- L5-S1の機能的連結改善
- 腰仙角の最適化
- 神経根周囲の可動性向上
これらのアプローチにより、血管走行路の物理的圧迫解除と神経血管束の機能回復を図ります。
2. 癒着の解放
血管周囲組織のリリース
- 内側大腿回旋動脈周囲の癒着解除
- 深大腿動脈分岐部の可動性改善
- 栄養動脈侵入部の圧迫解除
筋膜系の統合的アプローチ
- Deep Front Line の緊張解除
- Lateral Line のバランス調整
- 筋間中隔の癒着解放
内臓マニピュレーション
- 骨盤内臓器の位置調整
- 腸骨血管系の可動性改善
- 自律神経系への間接的アプローチ
終わりに
変形性股関節症における痛みの本質は、単なる「関節の摩耗」ではなく、骨の内側から始まる慢性的な炎症と循環不全の悪循環にあることが明らかになっています。
オステオパシーでは、これらの症状を局所的な問題として捉えるのではなく、全身の循環系と構造系の統合的な失調として理解します。
「治る力は、あなたの中にある」
この信念のもと、適切な血流とともに目覚める自然治癒力を最大限に引き出すお手伝いをさせていただきます。
当院では、理学療法士としての専門知識とオステオパシーの全人的アプローチを統合し、一人ひとりの循環動態と構造特性に応じた個別の施術プログラムを提供しています。
変形性股関節症の根本的な改善を目指す方、循環の視点から健康を見直したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
痛みの本質を見つめ、科学的根拠に基づいた包括的なサポートで、皆様の健康回復をお手伝いいたします。
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※改善には期間や個人差がございます。
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ブログを書いたスタッフ
大村 颯太
〜薬に頼りすぎない人生を共に創る〜 理論に固執しすぎず、結果にこだわる柔軟な施術家を目指しています。 ・理学療法士 ・健康科学修士 ・JEFPA認定足育アドバイザー ・発達ケア・アドバイザー ~Let's create a life together that doesn't rely too much on medication~ I aim to be a flexible therapist who focuses on results and doesn't get too hung up on theory. ・Physiotherapist ・Master of Health Science ・JEFPA certified foot care advisor ・developmental care advisor
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