原始反射統合不全って何?2026年最新版・分かっていることと分かっていないこと
大村 颯太

原始反射統合不全って何?2026年最新版・分かっていることと分かっていないこと

幼児の頭に触れて状態を確認している様子

「うちの子、なんだか動きがぎこちない」
「じっと座っているのが苦手」
「大人になった今でも、緊張すると身体が固まる」

そんなときに耳にすることがあるのが、原始反射の統合不全という言葉です。

京都・四条大宮の京都オステオパシーセンターOQでは、以前から子どもや大人の原始反射の状態を確認しています。ただ、この分野は情報がとても偏っています。「残っていると発達に影響します」と不安だけを煽るものと、「科学的根拠がないので意味がない」と切り捨てるものの、両極端しかありません。

そこでこの記事では、そもそも統合不全とは何を指す言葉なのか、そして2026年8月時点で分かっていること、正直まだ分かっていないことを、論文をあたって整理しました。8月30日(日)の体の教室でも、このテーマを扱います。

先に結論を3つだけ

  1. 原始反射は「消える」のではなく、脳の成熟によって抑えられているだけです。統合不全とは、その抑えが十分でない状態を指す言葉です。
  2. ただしこれは病名でも診断名でもありません。健康な子どもでも約9割に何かしら残っています。
  3. それでも見る価値はあります。治す対象ではなく、神経系の状態を外から覗く「窓」として使うからです。

原始反射とは何か

笑顔の赤ちゃん

原始反射(primitive reflex)は、赤ちゃんが生まれたときから持っている、自動的な身体の動きです。意思とは関係なく、決まった刺激に対して決まった動きが出ます。

代表的なものを挙げます。

  • モロー反射…大きな音や身体が傾く感覚で、両腕をパッと広げて抱きつくように戻す
  • バビンスキー反射…足の裏をなぞると足の親指が反り返る
  • 手掌把握反射…手のひらに触れたものをぎゅっと握り込む
  • ATNR(非対称性緊張性頸反射)…頭を横に向けると、向いた側の腕が伸びて反対の腕が曲がる
  • STNR(対称性緊張性頸反射)…頭を前後に動かすと、腕と脚が反対の動きをする

膝を叩くと脚が跳ねる反射(腱反射)は、一生なくなりません。一方で原始反射は、生まれて数か月から1年ほどのあいだに表に出てこなくなるという点が大きな違いです。

赤ちゃんが自分の意思で身体を動かせるようになるまでの、いわば仮のプログラムだと考えてください。

「消える」のではなく「抑えられる」──脳の三層構造

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。原始反射は消えてなくなるわけではありません。上の階から蓋をされているだけです。

2026年に発表された神経科学のレビューでは、この仕組みが三層のゲートとして整理されています。

階層 役割
脊髄 反射そのものの回路。信号が入る手前で抑える仕組みを持つ
脳幹 網様体・前庭系からの下り道。反射を強めたり弱めたりする調整室
大脳皮質 いちばん上から全体に蓋をする。成熟に最も時間がかかる

赤ちゃんの脳は、神経の線を包む「髄鞘」がまだ十分にできていません。また、脳のブレーキ役であるGABAという神経伝達物質のはたらきも、生まれてしばらくは大人と同じようには機能していません。

成長とともにこの配線とブレーキが整い、上の階から下の階を押さえられるようになります。その結果として、原始反射が表に出てこなくなる。これが「統合」と呼ばれている現象です。

だから、疲れているとき、強いストレスがかかったとき、あるいは年齢を重ねて上の階のはたらきが落ちたときに、抑えられていたものが再び顔を出すことがあります

抑えられる時期の目安

乳児の背中に手を当てて状態を確認している様子

教科書にはおおよそ次のように書かれています。1978年から1984年にかけて、Caputeらが正常な乳児381名を追いかけて数値化した研究が、今も基準の土台になっています。

反射 表に出なくなる目安
モロー反射 3〜4か月で弱まり、6か月ごろまで
ATNR 4〜6か月
STNR 6〜9か月
手掌把握反射 5〜6か月
足底把握反射 9〜12か月
バビンスキー反射 12〜24か月(※下記)

ただし、この「目安」自体が思ったほど固まっていません。バビンスキー反射がいい例です。

「2歳ごろまでは出ていて当然」と書かれた教科書がある一方で、1998年に健康な乳児256名を実際に調べた研究では、生後6か月までにはすでに足の指が曲がる反応が主体になっていたと報告されています。同じ検査でも、足の裏をなぞる強さや速さ、赤ちゃんの機嫌によって結果が変わるからです。

つまり、「〇か月を過ぎているからおかしい」という線引きは、思われているほど厳密ではありません。

原始反射統合不全とは何か

ここまでを踏まえて、本題です。

先ほど、原始反射が表に出なくなることを「統合」と呼ぶと書きました。統合とは、反射が消滅することではありません。上位の神経系がその回路を抑え込み、自分の意思で行う動きの土台として組み込んでいくことを指します。

たとえばATNRは、赤ちゃんが顔を向けた側に手を伸ばすための仕組みです。これが土台に組み込まれると、「顔を向ける」と「手を伸ばす」を切り離して使えるようになります。頭を動かしても腕が勝手についてこない。だから、目で見ながら手で細かい作業ができるわけです。

そして原始反射統合不全とは、この抑え込みが十分に働かず、本来抑えられる時期を過ぎても反射の反応が動きに顔を出してくる状態を指す言葉です。英語では retained primitive reflexes(残存原始反射)、あるいは neuromotor immaturity(神経運動的な未熟さ)と呼ばれます。

3つのレベルがあります

「統合不全」とひとことで言われますが、実際に見ていくと段階があります。

  1. 反射がはっきり出てくる…頭を横に向けただけで腕が伸びる、という反応がそのまま観察できる状態。実際にはあまり多くありません。
  2. 条件がそろうと出てくる…普段は抑えられているのに、疲れているとき、緊張したとき、課題が難しくなったときに顔を出す。これが最も多いパターンです。
  3. 動きの質として現れる…反射そのものは見えないけれど、頼んでいない余分な動きが一緒に出てくる。頭を動かすと肩がすくむ、片手を使うともう一方の手も動く、といった形です。

2番目と3番目が中心だという点が、大事なところです。「出るか出ないか」ではなく、どういう条件で、どの程度出てくるか。ここを見ていきます。

日常では、こんな形で現れます

抑えが十分でないと、身体は余分な仕事を抱えることになります。動くたびに、出てこようとする反射を押さえ続けなければならないからです。

  • 身体の力みや緊張が抜けにくい
  • 姿勢を保っているだけで疲れる
  • 頭を動かしたときにバランスが崩れやすい
  • 動きがぎこちなく、つまずきやすい
  • 子どもの場合は、じっとしていられない、落ち着きにくいという形で出ることもあります

じっとしている、というのは、実は身体を止め続けるという能動的な作業です。抑える力に余裕がなければ、その作業は難しくなります。

ここで、はっきりお伝えしておきます。

「原始反射統合不全」は、医学的な診断名ではありません。病院で診断される病気の名前ではなく、身体の使い方の特徴を説明するための言葉です。

さらに、この言葉には国際的に統一された定義や基準がありません。「どの程度出たら統合不全と呼ぶのか」という閾値が、研究者のあいだでも決まっていないのです。

ですから「統合不全があります」と言われても、それは異常の宣告ではありません。次の章を読んでいただくと、その理由がはっきりします。

健康な子の約9割に残っている──物差しが違うという話

では、統合不全と呼ばれる状態は、どのくらいの人にあるのでしょうか。

2023年に発表された研究(3〜8歳の健康な子ども120名が対象)では、89.5%の子どもに少なくとも1つの原始反射が確認されました。内訳はこうです。

  • ATNR…78.3%
  • モロー反射…70.8%
  • STNR…67.5%

ポーランドの4〜6歳児を対象にした別の研究でも65%、アメリカの研究では対象児の100%に何かしらの反射が確認されています。

不安を煽る記事の多くは「残っていたら異常」と書きます。しかしこの数字を見れば、それは成り立ちません。健康な子の9割で見つかるものを「異常のしるし」とは呼べないからです。

では、なぜ数字がここまで違うのか。答えは物差しが違うからです。

小児科の健診で使われるのは「出るか、出ないか」の二択に近い見方です。一方、上の研究で使われているのは0〜3の4段階で、「わずかに動きが出る」レベルまで拾います。だから陽性率が跳ね上がります。

大切なのはあるかないかではなく、どの程度なのか。そして左右で差があるか、時間とともに変わっていくか、です。

本当に見ているのは、運動の質

幼児がバランスをとりながら歩く練習をしている様子

4段階で評価するとき、実際に見ているのは反射そのものではありません。動きのなめらかさです。

たとえば四つ這いの姿勢で頭をゆっくり横に向けてもらうと、頭を向けただけなのに肘が伸びてくる、腰が流れる、身体が傾く。頼んでいない動きが一緒に出てくるわけです。神経学ではこれを連合運動モーターオーバーフローと呼びます。

そして「なんとなくぎこちない」を数値化するために、小児神経の分野には神経学的ソフトサインという評価があります。PANESSという検査バッテリーが代表的で、指のリズム運動やかかと歩きなどを行い、余分な動きの量や左右差を採点します。

ADHDのお子さんではこの余分な動きが多いという報告が複数あり、脳画像研究でも運動の抑制をつかさどる領域と関係することが示されています。

私たちが原始反射を見るときも、同じ視点です。抑えるはたらきのほころびが、動きに現れていないか。反射は、それを覗くための入口にすぎません。

出生時の状況と、身体の構造

うつ伏せの乳児の腰に手を当てている様子

「早く生まれた」「出産に時間がかかった」といった出生時の状況と、原始反射の残りやすさの関係は、以前から指摘されてきました。実際、早産のお子さんでは神経の成熟に時間がかかることが知られています。

もうひとつ興味深いのは、身体の構造との関係です。先ほどの2023年の研究では、原始反射が確認された子どもの83.2%に、頭や骨盤の動きの制限が同時に見られたと報告されています。

頭蓋と骨盤は、背骨と硬膜を通じて上下でつながっています。ここが動きにくいと、身体の位置や動きを脳に伝える感覚情報も変わってきます。

ただし、「構造の制限が原始反射を残している」という因果関係は、まだ科学的に証明されていません。同時に見られるという事実までしか分かっていません。

当院では、身体の構造を整えることで動きが変わり、結果として反射の出方が軽くなるケースを経験していますが、それは臨床上の観察であって、証明された効果ではありません。

ちなみに2026年に発表された臨床試験では、頭蓋の手技を含む群で発達検査のスコアが有意に伸びた一方で、原始反射に直接アプローチする運動プログラムは、見せかけの介入と差がつきませんでした。この分野は、まだ答えが出ていく途中です。

大人にも残る、そして加齢でまた出てくる

立位で姿勢を確認している様子

原始反射の統合不全は子どもの話だと思われがちですが、そうではありません。

口の横を軽くこすると顎の筋肉がピクッと動く「手掌オトガイ反射」は、20〜50歳の健康な成人でも6〜27%に見られます。これが60歳以上になると28〜60%まで増えます。

つまり原始反射の出現率は、乳児期に高く、成人期に低く、高齢期にまた上がるU字型を描きます。

そして認知機能との関係です。2024年に発表された29の研究をまとめた解析では、こうした反射が見られる人の認知症のリスクは13.9〜16.4倍と報告されています。最も多く見られたのは鼻の下を叩くと口が動く「スナウト反射」(48%)でした。

ここも冷静に読む必要があります。反射が出たから認知症になるわけではありません。上の階(前頭葉)のはたらきが落ちると、下の階の反射が顔を出す。反射は原因ではなく、結果として現れるサインです。だからこそ、身体の状態を知る手がかりになります。

発達障害との関係を、どう読むか

幼児が片足でバランスをとる運動をしている様子

ここは、いちばん慎重に書きます。報告されている内容を並べます。

  • ADHD…2023年のメタ解析で、ATNRとSTNRが抑えられていないことと関連が深いと報告されています
  • 自閉スペクトラム症(ASD)…2025年の日本の研究で、対象児の半数以上に四つ這い・立位でのATNRが確認されました
  • ディスレクシア(読みの困難)…2000年にLancetに掲載された臨床試験で、運動プログラムによってATNRが減り、読みの成績が向上したと報告されています
  • 発達性協調運動症(DCD)…運動のぎこちなさが中心の状態で、有病率は約5%とされます

これらはいずれも「関連がある」までの話です。原始反射の統合不全が発達障害を引き起こしているとは示されていません。逆に、脳の発達の特性がまず先にあって、その結果として反射が抑えられにくい、という説明のほうが自然です。

日本の今

日本では、母子保健法にもとづいて1歳6か月児健診と3歳児健診が行われています。ただ、この健診の項目に原始反射の残存チェックは含まれていません。乳児期のごく早い段階では反射を確認しますが、幼児期以降にあらためて見る機会は、制度上ありません。

一方で、子どもの運動環境は変わってきています。日本の大規模な調査では、座る・立つ・歩くといった運動の達成率が1990年から2010年にかけて低下したと報告されています。

うつ伏せで過ごす時間が短い赤ちゃんは運動発達がゆっくりになりやすいという報告もあり、2023年の調査では幼児の約半数が、平日に園の外で外遊びをしていないという結果が出ています。

原始反射が抑えられていくには、寝返り、ずり這い、四つ這い、そして転んで起き上がるという経験が必要です。その回数そのものが減っているのだとすれば、最近のお子さんに反射が残りやすいことにも説明がつきます。

2026年8月時点で、まだ分かっていないこと

正直にお伝えします。この分野で分かっていないことは、まだたくさんあります。

  1. 因果関係…反射が残っていることが原因なのか、結果なのかが決まっていません
  2. 正常の範囲…「どの程度までなら気にしなくていいのか」という線引きが存在しません
  3. 測り方…検査手技や採点法が統一されていません。標準化の試みは進行中です
  4. 介入の効果…反射に働きかけることで生活が良くなると証明した質の高い研究は、まだありません

それでも、見る意味があると考える理由

だから当院では、原始反射の統合不全について断定をしません。「残っているから発達に問題がある」とも、「だから施術が必要です」とも言いません。

代わりに見るのは3つです。

  • 程度…あるかないかではなく、どのくらい出るか
  • 左右差…右と左でどちらが出やすいか。左右差は、身体の使い方の偏りを教えてくれます
  • 変化…同じ検査を数か月後にもう一度行い、動きがなめらかになったかどうか

この3つは、診断のためではなく、身体づくりの方向を決めるために使えます。「頭を動かすとバランスが崩れやすいから、この動きから練習しよう」という具体的な判断ができるからです。

原始反射は、治す対象ではなく、神経系の状態を外から覗ける窓です。この記事でお伝えしたかったのは、その一点です。

【ご案内】8月30日(日)体の教室「原始反射統合セルフケア」

体幹のエクササイズを行っている様子

今月の体の教室は、この原始反射統合不全をテーマにします。

日程 2026年8月30日(日)10:15〜12:00

会場 梅小路公園 緑の館 和室

参加費 3,000円

内容

大人になっても抑えられきっていない反射は、決して珍しくありません。「緊張すると肩がすくむ」「バランスが取りづらい」「じっとしているのが苦手」。

そんな心当たりのある方は、ご自身の身体を確かめてみる良い機会になると思います。特別な道具は不要です。動きやすい服装でお越しください。

【期間限定】0〜8歳のお子さんの原始反射チェックを無料で行っています

子どもが足の運動をしている様子

記事の中で書いたとおり、日本の健診では幼児期以降に原始反射を確認する機会がありません。「気になるけれど、どこで見てもらえばいいのか分からない」という声を何度もいただいてきました。

そこで、8月から10月までの期間限定で、次の取り組みを行っています。

対象 当院をご利用の患者さんのご家族で、0歳〜8歳のお子さん

期間 2026年8月〜10月

費用 無料

所要時間 20-30分程度

反射だけでなく、姿勢や頭の形などもチェックさせていただきます。四つ這いや立った姿勢で、頭を動かしたときに身体がどう反応するかを一緒に確認します。お子さんにとっては遊びのような時間です。痛いことはしません。

ひとつだけ、あらためてお伝えします。これは診断ではありません。「統合不全があります」と言われても、それは病気の名前ではなく、今の身体の使い方の特徴にすぎません。9割の子に何かしら見つかるものです。

不安を持ち帰っていただくためのものではなく、お子さんの動きを一緒に見る時間だと考えてください。気になる点があれば、家でできる遊びや運動をお伝えします。

ご興味のある方は、施術のときにお声がけいただくか、LINEやお電話でお気軽にメッセージをください。「子どもの原始反射チェック希望」とだけ書いていただければ大丈夫です。

参考文献

  1. Capute, A. J., Palmer, F. B., Shapiro, B. K., Wachtel, R. C., Ross, A., & Accardo, P. J. (1984). Primitive reflex profile: A quantitation of primitive reflexes in infancy. Developmental Medicine & Child Neurology, 26(3), 375–383.
  2. León-Bravo, A., et al. (2023). Prevalence of persistent primitive reflexes and craniosacral dysfunctions in healthy children aged 3–8 years. Journal of Clinical Medicine.
  3. Gieysztor, E. Z., Choińska, A. M., & Paprocka-Borowicz, M. (2018). Persistence of primitive reflexes and associated motor problems in healthy preschool children. Archives of Medical Science, 14(1), 167–173.
  4. Gingold, M. K., et al. (1998). The rise and fall of the plantar response in infancy. The Journal of Pediatrics, 133(4), 568–570.
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  7. Leisman, G., & Melillo, R. (2025). Retained primitive reflexes as a biomarker of neurodevelopmental status. Frontiers in Neurology.
  8. Modrell, A. K., & Tadi, P. (2023). Primitive reflexes. StatPearls.
  9. Yoshii, K., et al. (2022). Secular trends in gross motor milestone attainment among Japanese children. Pediatrics International.
  10. 笹川スポーツ財団(2023)『幼児のスポーツライフに関する調査』

ブログを書いたスタッフ

大村 颯太

大村 颯太

〜薬に頼りすぎない人生を共に創る〜 理論に固執しすぎず、結果にこだわる柔軟な施術家を目指しています。 ・理学療法士 ・健康科学修士 ・発達ケア・アドバイザー ~Let's create a life together that doesn't rely too much on medication~ I aim to be a flexible therapist who focuses on results and doesn't get too hung up on theory. ・Physiotherapist ・Master of Health Science ・developmental care advisor

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