みなさん、こんにちは。京都オステオパシーセンターOQの大村颯太です。
Note記事ではオステオパシーや健康に関する情報を定期的に配信しています。
本日のテーマは「股関節周囲の靱帯に関する最新解剖学・徒手療法について」で、大村が投稿した内容を掲載しています。

股関節の安定性は、腸骨大腿靱帯（ILFL）、坐骨大腿靱帯（ISFL）、恥骨大腿靱帯（PFL）などの包靱帯が担っています。
従来はこれらを「動きを制限する構造物」として理解してきましたが、近年の研究では、それらが**筋腱との一体構造として働く“動的安定化装置”**であることが明らかになってきました。

特に注目されるのは、ILFLと小殿筋・腸腰筋との連続性です。
これらの筋が緊張することで、靱帯を介して関節包全体が張力を受け取り、動きながら関節を保護する「動的安定」の仕組みが機能していると考えられます。
これは単なる受動的な“ストッパー”としての靱帯像を超えた、構造と運動の統合モデルです。

また、股関節包には多くの神経が分布し、痛みや位置感覚のセンサーとして働いています。
関節包の伸張や弛緩、内部圧の変化が痛みを誘発することもあり、臨床での「前方のつっぱり感」や「深部痛」は、靱帯性組織由来であるケースも少なくありません。

変形性股関節症では、こうした靱帯・関節包に組織変化が生じます。
前上方関節包（ILFL領域）の肥厚、神経線維の増生、コラーゲン比率の変化が報告され、結果として動きの制限や慢性的な痛みをもたらすことが確認されています。
画像所見からも、病態に伴う包組織の「厚み」と「硬さ」が機能的な問題に直結していることが示唆されています。

徒手療法の観点からは、こうした靱帯・包組織に対してどの程度の力を、どの方向に加えるかが非常に重要です。
短時間で強い操作を行うと、コラーゲン線維が微小破断（マイクロフィッシャー）を起こす一方、軽度で持続的な操作では粘弾性（クリープ）を利用して水分再分布が起こり、可動性が一時的に改善します。
このように、徒手的介入の「力学的意味」を理解することが、安全で効果的なリリースのために欠かせません。

股関節の靱帯群は「守る」だけでなく「動かす」役割も持ち、筋・神経・結合組織が一体となって関節を制御しています。
その理解は、変形性股関節症の保存療法、アスリートの股関節痛、術後リハビリなど、幅広い臨床に応用可能です。

詳細は以下のNoteで紹介しています。
解剖・神経生理・徒手操作の3側面から、股関節の安定メカニズムを体系的に学べる内容です。
ぜひご覧ください。

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