はじめに

テニスをしていて、肘の内側にズキッとした痛みを感じたことはありませんか？
このような痛みは、一般的に「ゴルフ肘（上腕骨内側上顆炎）」と呼ばれますが、テニスプレーヤーにも多く見られる症状です。
単なる筋肉痛や使いすぎではなく、身体全体の使い方や構造的なアンバランスが関係していることも少なくありません。
今回は、テニスで肘の内側が痛くなる理由を解剖学的・運動学的な視点から紐解いていきます。

1. フォアハンドで肘外反モーメント

テニスのフォアハンドストロークでは、ボールを打つ瞬間に**肘が外側へ開こうとする力（外反モーメント）が強くかかります。
この外反力を内側で支えているのが、肘の内側にある屈筋群（前腕の内側の筋肉）や靭帯（内側側副靭帯）**です。
特に、インパクト時に体幹の動きが不十分だったり、手打ちになってしまうと、前腕の筋肉が過剰に緊張し、肘内側へのストレスが増大します。

繰り返しこの負担がかかると、筋肉と骨の付着部で微細な損傷や炎症が起こり、痛みやだるさ、力が入りにくい感覚が現れます。

2. 肘内側の解剖学的特徴

肘の内側には、複雑な構造が集中しています。

• 筋肉：円回内筋、橈側手根屈筋、長掌筋、浅指屈筋、小指屈筋など
• 靭帯：内側側副靭帯（UCL）
• 神経：尺骨神経（いわゆる“お笑いのツボ”）
• 血管：尺骨動脈・尺骨静脈

これらが狭い範囲に密集しており、どれか1つでも炎症や緊張が起こると、神経や血流の圧迫を引き起こします。
結果として、しびれや握力低下などの症状が伴うこともあります。

特に、尺骨神経は内側上顆のすぐ後ろを通過しているため、フォアハンド動作やサーブのフォロースルーで過度に牽引されやすく、神経症状を伴う肘痛も少なくありません。

3. 体幹の安定性・胸郭の柔軟性・下肢の協調運動

肘の痛みを引き起こす根本的な原因は、実は「肘」だけにあるとは限りません。

• 体幹が安定していない
• 胸郭（肋骨まわり）の回旋が硬い
• 下半身からの力の伝達がスムーズでない

このような全身の連動性の乱れが、結果として肘に負担を集中させているケースが多く見られます。
テニスは全身運動です。下肢の踏み込み、骨盤の回旋、胸郭の開き、肩甲骨の動き、そして腕の振りへとエネルギーが伝わっていく中で、どこかに滞りがあると**「最終的に弱い部分（肘）」が犠牲になる**のです。

オステオパシーでは、肘の痛みを肘だけの問題として捉えず、全身のバランスと運動連鎖を評価しながらアプローチします。
胸郭の可動性や骨盤の動き、足関節の安定性なども含めて施術することで、再発を防ぐだけでなく、プレー中のパフォーマンス向上にもつながります。

終わりに

テニスでの肘の痛みは、「使いすぎ」や「筋力不足」だけが原因ではありません。
身体全体の構造や動きのバランスを整えることで、肘への負担を減らし、根本的な改善が可能になります。

オステオパシーの施術では、痛みのある部位だけでなく、**“なぜそこに負担が集中したのか”**を探ることを大切にしています。
肘の痛みを通して、自分の身体の使い方や姿勢、呼吸のクセを見直すきっかけにしてみてください。

京都オステオパシーセンターOQ
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